【トークイベント】京都の魅力は湯船から ~ガストロノミーツーリズム 京都の観光資源“温泉”について紐解く~

2023年11月24日(金)18:00~19:15(代官山 蔦屋書店)

京都市温泉観光活性化協議会(以下、「温泉協議会」)では、歴史や文化溢れる“温泉地・京都”の魅力を皆様により知っていただくため、「いい風呂の日(11/26)」を直前に控えた11月24日(金)、代官山 蔦屋書店にてトークイベント「京都の魅力は湯船から! ~ガストロノミーツーリズム 京都の観光資源“温泉”について紐解く~」を開催。
放送作家 脚本家/京都館 館長の小山薫堂氏、株式会社インフォバーン代表取締役会長(CVO)の小林弘人氏、「空庭テラス京都・別邸」総女将の八重田かおり氏が登壇し、約60名の参加者が鼎談に耳を傾けました。

代官山 蔦屋書店

[トークイベント登壇者]小山 薫堂/小林 弘人/八重田 かおり

はじめに

イベントに先駆け、温泉協議会の会長 岩井一路(かずみち)氏(京湯元ハトヤ瑞鳳閣 代表取締役社長)が挨拶。「温泉協議会は今から8年前に設立された団体で、京都の温泉に来ていただけるような、そういう環境を作っていこうということで活動しております。皆さん、ピンと来ないかもしれませんが、京都は温泉が豊富に湧いてるエリア。入湯税から逆算すると、昨年は100万人を超える温泉の利用者がいまして、今年は12月までであと数十万人ほど増えるのではないかと考えておりますが、実は、京都に来られて『たまたま温泉があった』ということで、入湯税をお支払いいただいてる方がほとんどかもしれないんです。ですので今後は、京料理、花街と同じように、文化観光ということで、京都の温泉の文化も活性化させていきたいと考えています」と話しました。

トークイベントの様子

京都市内の温泉

イベントでは最初に、八重田氏が参加者に対して「京都は寺社仏閣をはじめ、伝統工芸、それに京料理と観光コンテンツがたくさんあるので、温泉という言葉に目がいかないと思うんですが、『京都に温泉がある』というのをご存じだった方はいらっしゃいますか?」と問いました。すると、チラホラと4~5人が挙手。これに八重田氏は「そうですよね。やはり京都に温泉があったっていうのを知らない方が多いかと思います。近くですと有馬温泉や城崎温泉というのは、よく耳にするんですけどね…」と納得の表情を浮かべました。

次に、京都市内の“天然温泉マップ”を掲示して「京都は3つのエリアに温泉が分かれており、市内中心から上の方に向かって洛西エリアが、もう少し北の方に行って、ちょっと右側に北部のエリア・大原が、左側には観光地として有名な嵐山のエリアがあります」と八重田氏。

トークイベントの様子

「京都の温泉は本当に泉質がすごく豊かでございまして。もともと日本の温泉法に定められている泉質は10種類あるんですけれど、京都にはその内の5種があり、1つめは単純温泉、2つめはストレス解消、健康増進と言われる放射能泉、3つめは鉄分が入っていて女性にうれしい含鉄泉、4つめは肌がツルツル、入浴後もポカポカポする塩化物泉、5つめはさっぱりとした感じの炭酸水素塩泉となっています」。

ちなみに「空庭テラス京都」は、塩化物泉で、透明で柔らかい水質が特徴。「マグネシウム成分が全国で4番目に入ってるということで、非常に豊富に含まれており、女性にも外国の方にも人気。いつまでもポカポカするのと、『よく眠れる』ということを言われます」と胸を張りました。

さらに「実は京都の駅前にも温泉がありまして、京都駅を降りたらすぐの『京湯元ハトヤ瑞鳳閣』さん。1億5000万年前の地質から汲み上げられているという、それはもうミネラルたっぷりの温泉で。炭酸水素塩・塩化物泉の2種類の泉質を楽しめるそうです。日帰りもできますので、是非、皆様も遊びにお出かけくださいませ」とアピールし、「京都の中、数キロちょっと移動するだけで、これだけたくさんの泉質を楽しむことができるんですよ」と解説しました。

トークイベントの様子

このような話から、小山氏は「『空腹は最高の調味料』といったように、今、京都では駅からタクシーが全然つかまらないのですが、『歩くまち・京都』憲章を定めている京都で、さんざん歩き疲れていいお湯に浸かるというのはいいですよね」と改めてコメント。八重田氏も「歩いた後の温泉は疲れが取れそうですね。京都は坂も多いのですが、歩いた後に温泉の効果を感じて、皆様喜ばれていると思います」と納得していました。

また、「京都はお風呂を文化にする最高の場所だと思うんですよね」と小山氏。「今は少なくなりましたけど、昔、京都には桶屋がものすごくたくさんあったんですね。それで、桶っていうのは、日本人の人生にとって本当に深く関わっていて、まず生まれた時はたらいで産湯を使うじゃないですか。で、大きくなってくると、樽で作った味噌でご飯を食べて、大人になったらそれで酒を飲んで、お風呂では桶を使ったりして。それで、死んだら棺桶に入るわけですよね。だから桶っていうのは、日本人の人生にものすごく深い関わりがあって。それが京都に集中していたっていうのは、やっぱり日本文化の中心地である京都が『京都である』ということの証しなのかなと思いますね」と考察し、「湯道では特製の桶を木工芸職人の中川周士さんに作っていただいたりとかしているんですが、やっぱりいい桶を使ってお風呂に入るだけで、日常なんですけど、非日常的な感じになるんですよ。お湯の浴び方も変わってきますよ」と、“湯道の家元”らしく、京都の話から桶の話まで、話題は多方面に及びました。

トークイベントの様子

地場資源の活用

八重田氏からは他に、小林氏に対して「今回は京都の温泉というテーマですけれども、そのような地場資源、これをよりもっと魅力的にしていくために私たちはどんな活動をしたらいいのか、もしアドバイスがありましたら教えてください」という質問も。

すると小林氏は「地域や生活者、企業のみんなで一緒にサービスやプロダクトなどの商品、価値を創造するモデルで、実際の生活空間で社会実験を行う『リビングラボ』というものが日本の各地で展開されています。それは、地域の方々が主導的に、事実的に永続してやれるよう、地場を盛り上げていくために展開されているのですが、その時に必要になってくるのが地域外の人たちの力。違う視点、あるいは新しい知識、大企業でしたら技術だったりノウハウだったり、そういったものを一緒にミックスするような形が必要です」と進言。

トークイベントの様子

「当社でも、京丹後でリビングラボを立ち上げ、1年以上にわたって地域の方々と一緒に活動しています。たとえば京都には、どの旅館からも夕日が見えると言われる夕日ヶ浦温泉郷という綺麗な場所があるのですが、これまでは現地のプレイヤーがそれぞれ集客を考えていたなかで、このリビングラボを通じて、みんなで『どうやったら人に来てもらえるか』『他所にもどうやって送客するか』を考えました。具体的な施策としては、サイクリストに目を付け、温泉にサイクリングラックを置いて、サイクリストに優しい環境を整えたり、サイクリングルートのマップを作ったりしました。地域には自分たちでは気づかない観光資源が眠っているケースもよくありますが、他県からもたくさんの協力者が来てくれたことが、『自分たちの魅力は何なのか』を発見する助けになっています」と、自身の経験を踏まえてアドバイスしました。

トークイベントの様子

温泉+ガストロノミーツーリズム

そして、トークイベントのテーマにもなっている「ガストロノミーツーリズム」については、「ガストロノミーは美食学という意味で、その土地の気候風土が生んだ食材や習慣、伝統、歴史などによって育まれた食を楽しみ、旅することをガストロノミーツーリズムと言うそうです」と八重田氏。

小山氏は「そこに温泉が加わると…。ガストロノミーツーリズムの根幹には、おいしいということだけでなく、健康という要素もあると思うので。やっぱり体にいいものを食べて、温泉に浸かったら、それだけで生まれ変わったような気になったりとか、それがきっかけで健康にさらに気を遣うようになると思うんですよね。なので、温泉とガストロノミーツーリズムを合わせれば、ヘルスツーリズムに発展させられる。自然の恵みという要素もあると思うので、そういう意味では、ガストロノミーツーリズムというのは“地球への感謝の旅”ですよね」と、美しい言葉で表現していました。

最後に小山氏は「京都の温泉とか言わずに、京温泉という言葉を作ったらどうでしょう。京都の野菜も京野菜っていうだけで食べたくなるじゃないですか。海外の人ってやっぱり熱いの入れないですし。ぬるめの京温泉で入浴しながら瞑想する。これが京温泉なんだというのを定義付けて。京都の温泉にはポテンシャルがあると思いますよ」と提案。小林氏も「入浴しながら瞑想、汗がたくさん出て美容にも良さそうですね」と頷いていました。

トークイベントの様子

トークイベントの様子はこちらからご覧いただけます。

Profile

小山 薫堂

放送作家 脚本家/湯道家元/京都館 館長

小山 薫堂

1964年、熊本県生まれ。日本大学芸術学部放送学科在籍中に放送作家としての活動を開始。「料理の鉄人」「カノッサの屈辱」など斬新なテレビ番組を数多く企画。脚本を担当した映画「おくりびと」で第32回日本アカデミー賞最優秀脚本賞、第81回米アカデミー賞外国語部門賞を獲得。執筆活動の他、地域・企業のプロジェクトアドバイザーなどを務める。熊本県のPRキャラクター「くまモン」の生みの親でもある。2015年より、現代に生きる日本人が日常の習慣として疑わない「入浴」行為を突き詰め、日本文化へと昇華させるべく「湯道」を提唱。2020年10月「一般社団法人湯道文化振興会」を創設した。

小林 弘人

株式会社インフォバーン代表取締役会長(CVO)

小林 弘人

1965年、長野県生まれ。1994年に『WIRED(日本版)』を創刊し、編集長を務める。1998年に企業のマーケティング・コミュニケーション支援をする会社インフォバーンを創業。ベルリンのテック・カンファレンス「Tech Open Air(TOA)」日本公式パートナーとなり、2017年よりヨーロッパ視察プログラムを企画、実施するなど、日本におけるオープン・イノベーションの啓蒙を行い、現在は企業や自治体のイノベーション推進支援も行う。

八重田 かおり

空庭テラス京都・別邸 総女将

八重田 かおり

神奈川県出身。大学卒業後、サービス業界での営業職や外資系企業でのマーケティング職など様々な業種、職種を経験し、6年前に「空庭テラス京都」を運営するサンフロンティアホテルマネジメント株式会社に入社。「SADO RESORT HOTEL AZUMA」「HIYORIオーシャンリゾート沖縄」の開業に携わった後、「空庭テラス京都・別邸」の総女将に就任。


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